深海の水のように

研ぎ澄ませ心を

夜曲 〜ノクターン〜 感想

夜曲 〜ノクターン

2023.6.20〜22


本当に楽しかった!ありがとうございます!


出会いとさよなら、現実と幻想、あちら側とこちら側・・・色々と人生について考えちゃうような作品でした。


作品がとっても面白くて、出演者の皆さんのお芝居力もすごくて、五関様を通して素敵な作品を見れてよかったです。

夜から始まって朝で終わるのも大好きでした。

 


ツトムくん・・・五関様にツトムくんの役が来てよかったです。すごく良かった。五関様の繊細な声がツトムくんにぴったりでした!あと五関様ってちょっと幻想的な雰囲気があるので、小劇場の長くて装飾的で情緒的な、美しい言葉が似合いますよね。あと声を張れば張るほど弱々しく悲痛に見えるところ・・・めちゃめちゃツトムくんに合ってて弱さに圧倒されるというか、心臓を握りつぶされそうになってました。

ツトムくんは五関様の役だな〜と見ながらずっと思ってました。良いもん悪いもんを分けて良いもんを応援する放火魔の、思ってることとやってる事のギャップというか、アウトローさとピュアさの共存具合がぴったりすぎでした。放火魔は分かりやすい話だと明らかに悪者だけどツトムくんは悪い奴ではないので、そういうなんか自身が複雑ななんかも。

絵本で見たインディアンののろしとか若草物語がサッと出てくるのとか最後のページをゆっくりめくるのとか物語が好きなのに本屋を燃やして物語とか学問が燃えていくのはイカしてるっていうのも、複雑なんですよね。これはこう!この人はこういう人!と言いきれないものがたくさんある。


ツトムくんのあちら側に行きたいけど行けないところが愛しくて共感しつつしんどかったです。700年前の話もゴロウと放火についても、ゴロウの話を聞いてドン引きしてこの人とは理解し合えないなみたいな感じがあったり、十五とも結局は分かり合えなくて、サヨちゃんにもあちらとこちらで断絶されて、ツトムくんはどうしてもこちら側なんですよね。切ない。

でもツトムくんは蚊帳の外といっても、700年前の話はそもそも自分が安全な蚊帳の外から物語だと思って見てますよね。ゴロウにも足洗おうって軽率に言っちゃうし。


奇子の仁朗もベートーヴェンのリースも、人の物語を横から見ているような役だったと思うんですけど、今回のツトムくんもちょっとそんな感じで、そういうのも面白いなと思いました。包容力というかなんというか、なんなんですかね。

でも最後の夜明けのモノローグは主人公にしか言えないので、やっぱり夜曲という物語の主人公はツトムくんなんですよね。

 

 

とっつーの十五も良かったです!とっつーってこんなにコミカルなことできるんだと(笑)新しい一面を見た気がします(笑)

虎清を斬った後とか目がヤバくて、私が入った回のどこかで血の着いた刀を舐めようとしていて(!)これは分かり合えないよなと思いました(笑)回によって全然違うので真意の程があんまりわかんないのですが・・・思い詰めた後にすごい開き直り方してるのが好きでした。あちら側の人だし。前のフォーティンブラス(羽沢くんもあちらとこちらの間で足踏みしてる役だった気がする)を経ての十五の振り切り方とっても良かったです。


とつごってABCXYZのコンサートのMoonlightWalkerとか、えび座の抱きしめてトゥナイトとか、コンビで夜のパフォーマンスが続いていたので、この夜曲という作品で、とつごというキャスティングも、もちろん塚ちゃんも見てみたかったですが、とつごでもぴったりだなと感じました。


他のキャストも皆さんすごく良かったです。やっぱり中屋敷さんの演出作品って適材適所というか、役と人があってるなと見る度に思います。

 

 

あと特に印象が強かったのは黒百合でした!男と女の演じ分けが!立ち方とか所作とか!ものすごく勉強になりました!(?)

花横の席だった時に、黒百合(しろう)が花道の七三で止まって千代姫を先に行かせて、何か言って去る時に着物の裾を端折ってたのに気づいたんですけと、かっこよすぎてハワ…ってしてたら目が合ってやばかったです。玉野尾もなんですけど客席にバシバシ目合わせてましたよね。すごい。


黒百合がしろう(漢字がわかんないんですけど、士郎?)とわかってからの、虎清と黒百合の信じる信じない殺す殺さないの話で、初見の時に黒百合めっちゃ虎清のこと愛してるんじゃんって泣いたんですけど、千代姫とのことがわかるだいぶ終盤まで、しろうの頃からの虎清への巨大感情だと思って見ててすいませんでした(笑)

多分しろうとは別で"黒百合"は虎清のこと愛してたんだろうなぁと気づきました!この2人まじで良すぎる。

虎清が十五に斬られて死ぬ時、立役の衣装に変わったしろうが、その時だけ黒百合になって虎清に向けて最期に語りかける「きっとこんな夜だった。一人の男が(しろうの死んだ時の描写)(うろ覚えすぎて書けん)もっと生きたいと願ったのは」の話は黒百合の生まれの話じゃないですか、願い叶わず死んでしまったからこそ生まれて虎清と出会ったわけじゃないですか。というのを思ってまためちゃめちゃ泣きました。この話は一旦玉野尾を挟むので紆余曲折はあるんですけど。

夢を見ながら死んでいく虎清・・・(と最終的に現実を見つめるツトムくん・・・)


こんなに泣くの初めてってくらい、色んなところで泣いていたんですが、物語の終盤、ツトムくんがさよならが寂しいっていう話の時に、皆がカーテンコールのように並んで奈落に降りていくのがものすごく泣けてしまって・・・個人的な話なんですけど、私が最初に観劇する2日前に、とある公演が千秋楽を迎えて、その最後のシーンを思い出してしまって、もう二度と見れない寂しさを思い出して、ザブザブ泣いていました。このタイミングで見られてすごくよかったです。

 

 

作中で玉野尾も黒百合も十五も、時の流れと物質とか人の変化の話をしますけど、それに対して千秋楽の時には"始まれば終わる"ことを実感して、めっちゃゾクゾクしたんですよね。それって、その1回を生で体感する演劇ならではの感覚だと思いました。でも玉野尾の恨みみたいに、時が流れて物質や人の形だったり全てが変わっても、得た感情は残るので、忘れたくないですね。


それと同時に、700年経って色んなものが変わってお家を守る意味ももう何も無いのに、正直死ぬ必要のない千代姫の影を殺したり昔と変わらないことをしてるのが、胸が締め付けられるような、狂おしいような、良いしんどさがありました。

 

 

しんどいっていうとサヨちゃんのこと思い出すんですけど、サヨちゃんが自分に嘘はつきたくないっていうのは千代姫の影が自分として虎清と結婚する(=自分が虎清を愛してるってことにされる)のが嫌だったのかな〜とちょっと思ったけどどうなんですかね。千代姫(影)の自己紹介のとことか可愛い〜!ってしてはいるけど、影の振る舞いにケチつけてたし。

そんなサヨちゃんが千代姫としてあの物語に乗り込んでいくの大好きでした。すごい、正ヒロインとしての強さと貫禄がすごかったです。


そういえば、ツトムくんがサヨちゃんと話したのは「おばけ幼稚園」が最初で、その時点でサヨちゃんの名前を知ってて、火をつける日どりはツトムくんが「今度の金曜日」って決めた、ということはサヨちゃんは放火界隈みんなに声かけてて偶然ツトムくんがハレー彗星の日に火がつけれたってことなのかな〜などと思ったんですけど、76年に1度しかない機会だけど、それにしては偶然に拠るところがあまりにも大きすぎるなと思って、サヨちゃんは生まれ変わる度にチャレンジしててようやく成功したのかな〜とか思うと、また泣けてきちゃうんですよね。とんでもないことじゃないですか。

 

 

前楽かその日の昼公演で、だんだんアドリブが長くなっていくのが、物語の終わりにゆっくりページをめくるようで、さよならが来る時を感じて寂しかったんですけど、千秋楽の最後に明るく爽やかに終わったので、こちらはあんまりさみしくならなかったのも良かったです。ツトムくんも終わってしまうと思ってる間はつらいけど物語が終わってからは引きずらないんだろうな。


ツトムくんの、終わったお話に対しては引きずらずに、また違うお話を読んでまた終わるのがさみしくなって・・・っていう繰り返しが、自分たち観客もいろんな公演で千秋楽のたびにさみしくなるけど、終わればまた次の違う作品を見て終わりがけにさみしくなって・・・を繰り返す訳だけど、夜曲すごく好きだったので、その繰り返しの一部になってしまうさみしさを感じます。ただ、終わってしまうからこそ、終わったもの(公演全体もそうだし、そのうちの1回もそう)にはもう二度と会えない、これっきりのさよならだからこそ美しいなとも思います。再演しても同じものは見れないですもんね。でもこれっきりのさよならをしても、見て感じたこと、思ったこと、感動は忘れないんですよね。何が言いたいかというと、演劇めっちゃ好きだなと思いました。

物語も演劇も、終わるからこそ美しくて、愛しいと思います!

 


夜曲を見て、私って演劇が大好きだなとあらためて思いました。いい作品が見れてよかったです!