深海の水のように

研ぎ澄ませ心を

フォーティンブラス感想

フォーティンブラス 8/27.28 どちらも夜公演

@シアターコクーン


お芝居やる人ならだいたい1度は「この公演、本編より舞台裏の方が面白いよ」なんて言われた経験があるんじゃないかと思うんですけど、そんな、本編よりよっぽど面白いだろう舞台裏についての話でした。


もちろん話もすごく好きだったんですが、ことあるごとにわかる〜!ポイントがたくさんあって、そんなところも面白かったです。お芝居は楽しい!

登場人物もみなさんギリギリいそうでいなそうでいそうな感じでよかったです。中屋敷さん演出の舞台ってみんな絶妙にフィクションみがありつつもリアルで魅力的なところが好きですね。


あと生きてる人間のパワーを感じられるのがよかった!!小劇場みがあるというか、すごい熱さでこちらに向かってくるのでめちゃ圧倒されました。早口でまくし立てるお芝居久しぶりに見たけどやっぱり楽しいな!


また、アイドルを追いかけて何度も同じお芝居を見るタイプの人間になったからこそわかる面白さ的なものが感じられたのもすごくよかったです。元は(今でも)信さんみたいな俳優と役が好きなんですけど、今なら正美みたいなスターの良さも分かるので・・・


そこそこ前に書かれた戯曲なので古い部分もあるし、今の人達って多分そこまでハチャメチャじゃないとも思いますが、でも何を見て聞いて何を感じて考えて、っていう所が今と変わらないなぁと思う所も多くて(演劇論とか皆の演劇愛とかも)、受け入れやすかったです。大切なものは変わらないなぁ。

個人的にはハチャメチャなキャラも好きです。それこそ劇中にも出てきたけどコンプライアンス遵守な"サラリーマンのような演劇"よりもね・・・実際に身近にいたら持て余しそうではありますけど・・・・(笑)

 

 

とっつーの羽沢くんはとっつーのお芝居スタイルがまためちゃ雰囲気に合っていて、この世界の人〜〜!って感じがとてもよかったです。とっつーは完全にスターなんですけど、自分はスターじゃないと思ってそうな部分があって(たまにインタビューとかで見かける)さらにジャニーズの中でもたくさんお芝居やって、苦労人なんて言われ方をしていて・・・。そういうのも相まって、不満はあるけど思い通りいかなくて足踏みしてるキャラができるのかなと思いました。とっつーはパンフレットで羽沢くんはクソ野郎って言ってますが、私はすごく親近感が湧きました。(私はそんな大層な存在ではないですが・・・)

そういえば羽沢くんはどんな作品でどんなお芝居がやりたいんだろう?なんか勝手に小劇場みたいなイメージで見てたんですが商業のオーディション受けてるし。気になる!


とっつーのツートンカラーの髪がちょうどいい感じに黒髪も目立ってきていて、金髪の中から黒髪のニュー戸塚が生まれてる感があって素敵でした。前傾になった時とかに黒髪の日本のいい男に見える瞬間もあって、まっすぐ立つと金髪がきらめいて本当にノルウェーの王子様みたいに見えて、どちらもとてもかっこよかった〜!

 

 

内くんの正美とてもかっこよかったです!!とっつーとはまた違う種類の華があって、天下の大スター様の感じがすごくありました。声もすごくよかったです。

すごいカリスマ性というかなんというか、終盤の覚醒シーンなんてもうあまりの凛々しさかっこよさにサミー〜〜〜〜〜〜!!!一生ついて行きます!!!みたいな気持ちになりました!!

サミーのおたくがいちばんかっこいいあの瞬間を見れないのもったいなすぎる。サミーのおたくは何が起きて最後の演劇の神様回になったのかよく分からなくて監督がいたから真面目にやったみたいになっちゃう。今日のサミーはハムレットが憑依してた😭と思うかもしれない。でも何年か後に思い出す時は野放しの正美バージョンの方が面白かったんじゃないかなんて思ってしまう・・・正美はあんなにかっこよくトラウマを乗り越えたのに・・・・・壮絶な人間ドラマがあるのに・・・・・・・


でもこれってサミーのおたくだけじゃなくて、内くん本人とかとっつーとか、スターを追いかけてる人にとってはみんなそうなんだよなと思います。たぶんみんな舞台裏とかの素の方がかっこよかったりするんだろうな・・・なんて・・・・・


あと腰巾着のダニエルですけど、役者じゃないのに誰より声でかくてすごく良かったです。かわいい

 

 

能條さんの刈谷さんすごく好きでした!

能條さんは応援屋オンステージで前にも拝見していたのですが、その時と印象が全然違いました。雨宮さんもかわいいですが、刈谷さんは強くて元気ですごくよかったです。サミーに啖呵切るところとかもかっこいいし、作中のエンターテインメントについての考え方を背負っているところもよかったです。「わたしを見に来てるお客さんもたくさんいる」ってかっこよくて好きでした。あのバチバチシーンでサミーに対抗できる強さを持ってるのが刈谷さんだけなので・・・

あと演劇畑の人じゃない刈谷さんが、最初はやる気なかったけど、最終的に舞台に立つ動機が"人を楽しませたい"に行き着くところが、すごくいいです。

刈谷さんが個人的にサミーと相性悪いのもあるんですけど、タレント枠の方が羽沢くんとか信さんみたいなポジションの人と仲良いのめっちゃ良きです。好き。ノルウェー組かわいいです。ノルウェー組についてはまた後述します。

刈谷さんのオフィーリアどんな感じだったんだろうな〜

 

 

富岡さんの信さんもめちゃ好きでした!

だいたいお芝居見るとああいう人が好きです(急な自己紹介)

フォーティンブラス父に対して芝居がかった感じでずっといますけど、実際のシェイクスピア作品の道化っぽさがあるのがとてもよかったです。ダジャレの言葉遊びもとてもシェイクスピアっぽい印象でした(あんまり詳しい訳じゃないですが)

アングラは訳のわからないことをやって馬鹿が賢そうに見せるジャンルみたいな事を言っていたのとか鶏の頭のくだりとか、冷静に見ちゃうところ・・・やってるのに入り込めないところがある所(こういう人いますよね。すごいリアル)から、フォーティンブラスの父っていう非現実を当事者として体験するうちに、道化のお芝居するのが戻れないほど楽しくなるのがまたいいな〜と思いました。信さんのこれまでのお芝居とこれからのお芝居とっても見てみたいです。

 

 

羽沢くん、刈谷さん、信さんのノルウェー組(って勝手に呼んでるんですが)すごく可愛かったんですけど、あの3人ってわりと“よその人”感があるんですよね。サミーはまたちょっと特殊ですが、座組の皆って長い付き合いなのか、すごく仲良しな雰囲気で、ちょっと閉鎖的な印象があって、演目が変わってからオーディションに参加して加わった羽沢くん、これまでバラエティタレントだった刈谷さん、アングラ畑から来た信さんの3人はちょっと他のみんなと馴染めてない感があった気がして・・・

信さんがお酒飲めない羽沢くんをわざわざ誘うのも、もしかしたらそういう事かもしれないし、刈谷さんが懐いてるのもそういうことなのかな〜〜とちょっと思いました。かわいい。


あとノルウェー組のバランスの良さというか。羽沢くんはフォーティンブラス父と一緒に出番の間の物語を作り上げて、フォーティンブラスへの理解を深めて演劇の神様回に出ますが、刈谷さんは周りの皆との温度差とか、最終的に自分は人を楽しませたい!と思ってることとかに気づいて、神様回でおそらく凄いお芝居してると思うんです。けどオフィーリアについての理解は1mmも深まってなくて、その対比というか、同じ作品だけど舞台に上がるまでのアプローチが全然違うのがすごく面白いです。そしてほとんど素のまま墓掘りやってそうな信さん・・・このトリオが本当にめっちゃいいんですよね・・・!

そんな色んなタイプの人達が集まって作るお芝居ってすごく懐が深くてこれまた面白いんですよね!

 

 

吉田さんのフォーティンブラス父(和春)がまたなんかものすごく良くて、分かる・・・!ってなってました。劇場の亡霊もノルウェーの王様も合ってました。かっこいい所と可愛いところのギャップが・・・かわいい・・・・・・

あと昔のこと思い出してポーランドに向かう行進する所がすごくかっこよくて、確かにこれはセリフが無くても歩くだけでかっこいいなと思わせるのがとてもよかったです!お芝居のいいところって言葉じゃなくて、そういう身体の説得力というかなんというかそういう感じだと思うので、本当に生前も名脇役だったんだなと感じました。かっこよかった〜〜

 

 

納谷さんの岸川くんはなんかすごいリアルで、こういう子いる!!ってなりました。

オズリックのお芝居してる時の身のこなしとかちょっと気取った姿勢とかがアニメ好きな子のお芝居っぽいなと思ったのですが、納谷さんが2.5で活躍されてる方らしくてなるほど!!となりました。

大切な感情を話す時にハムレットの台詞で話すところもちょっとおたくっぽくて、全体的にわかりみ・・・となってました。

志も高いし真面目なので楽屋で愚痴を言い合ってるのは嫌いみたいなのも、実際に見たことはないけどこういう子いそう。

あと岸川くんのハムレットについて、座組の皆は正美のハムレットよりこっちがやりたいって言ってたけど、果たして本当に岸川くんのハムレットが面白いかっていうとそうでも・・・と思わせるところがすごくて・・・体操してる時に岸川くんと恵子でお遊びする所もですけど、岸川くんがバチギレで正美にすがりついてハムレットの台詞言うところでも、感情ノリノリ気合い入りまくりで、もしあれが舞台上で繰り広げられてたらちょっと重くて客が入り込める余地がないというか・・・・感情が昂ってワーッてなったのもあると思うけど・・・・・・気合いの入れ方と見る側の印象は比例しない・・・・お芝居に限らず人の感性に訴えるものって難しい・・・・・・・・となんかすごく自分に立ち返って考えながら見ちゃいました。まだスターの器ではない、成長中な感じがすごくリアル(?)でした・・・

あと岸川くんが和春と玉代さんに対して「乳くりあってる」って言うの好きでした。絶妙な言葉選びだなと思います。しかも何度も言う。

 

 

矢島さんの玉代さんはよく分からなかったんですが、分かるんですが、脚本や配役でわりと引っかかりポイントがあって、絶対に超重要キャラ!!みたいな異様な存在感があってよかったです。

パッと見では若いけれど、おばさんと呼ばれてるし、姿勢や声でたぶん年配の役なんだろうなという印象でした。でも他の人が普通に年齢とそこまで離れていない役で、なぜ玉代だけ若い人が老婆を演じているのか・・・・?(パンフレットで矢島さんが玉代は40代くらいと仰ってたので老婆でもないんですけど)矢島さんのお芝居に違和感があるとかではなくて、なぜ1人だけ役と演者に年齢差があるのか、和春との間にも年齢差が感じられるのか、ちょっと意図が読み取りきれませんでした。

後半、和春に昔のことを思い出させようとして他の作品の台詞言う時の声がかっこよくて素敵だったので、別に年齢違う人の役でも作り声じゃなくて普通の声でやってもよかったんじゃないかな〜とも思いました。

 

 

あとこれはお話の上での疑問なんですが、なぜ玉代さんは演劇の神様がご褒美をくれたのよと言いつつ舞台に穴をあけるのか?謎でした。演劇より和春の方が大切なのは分かりますけど、分かりませんけど。あの回のハムレットって、今までなあなあにしょうとしてきた地獄の空気を皆が自分と向き合ったりして全員で一度ぶつかり合って正美がトラウマを克服して、皆で成長して奮起して上演した、すごい人間ドラマの上に成り立つ1+1が10にも20にもなる人って最高!演劇って最高!回だと個人的には思うんですが、それを「演劇の神様がご褒美をくださった」って全ての人の気持ちと成長を無下にした発言のような気がして・・・演劇の神様って何なんですか・・・・初回公演はなんかドタバタしつつも上手くいくみたいなやつじゃないんですか・・・・分かりませんでした・・・

神様=客席?とも思ったのですが、人も神様も芝居好きは同じみたいな分けて考える台詞があったので、そういう事でもないのか・・・謎です・・・

 

 

自分はお芝居好きだな〜人間好きだな〜とあらためて感じるお芝居でした。中屋敷さん演出の作品はサクラパパオーも奇子もそうですが、そう思えるので好きです。みんながちゃんと1人の人間として生きていて魅力的に見えるような。

よかったな〜!!